★★★★★  自分的名作「あなたの声を聞きたい」を軽く飛び越えたのではないかと!!三十二番目の初恋 (幻冬舎ルチル文庫)作者: 椎崎夕,金ひかる出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス発売日: 2008/12/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 34回この商品を含むブログ (9件) を見る梶山先生(クールで優しいがどこか距離を置く外科医)×想(不幸な美容師・骨折中)


美容師の瑞原想は、同棲中の恋人に「結婚するから」と家を追い出され、呆然としていた。失意の中、更にトラブルに巻き込まれ右腕を骨折し、想は家だけでなく仕事も失う事に―。しかしその後、骨折のきっかけとなった勤務医・梶山の家に居候することになり、生活感のない家で二人一緒に暮らすうち、恋人を失った過去に縛られたままの梶山に惹かれ始め…。(あらすじより)


自分のせいで想の右手を負傷させてしまった、と淡々と『けがを負わせてしまった責任を取る義務』を果たす梶山。優秀な外科医である彼は『社会に出た、分別のある大人』としてきちんと想の面倒を見てくれます。想を邪険にすることもなく、一緒に買い物にも行ってくれるし体の心配もしてくれます。でもそれは想自身に興味があるわけでもなく、ただ本当に『義務』を果たしているだけなんですよ。なんかこう、しばらく会ったこともない親戚を預かった人、という感じで接するんですな。


一方の想は同棲相手からひどい扱いを受けて家を追い出されてしまった後、梶山のもとで穏やかに暮らしながら、いつの間にか梶山を信頼して心と体を癒していくんですよ。それが梶山への恋になってしまっても、梶山のことを思うあまり言いだせない。
想は今まで交際してきた誰からも大切にされた経験がない分、諦めの気持ちが身についているせいか自分を捨てた男にも怒りより『諦め』の感情を向けます。自分なんか幸せになれない、と無条件にあきらめているところがとてもかわいそうだった!!
特に想の過去にあった事件なんか、完璧に被害者なのに『自分がすべて壊してしまった』と思いこんでいるところ、それを逆手に取られてまた脅されていくところなんかあまりに理不尽すぎてリアルで青筋が立ってしまった。
それみんなテメエのせいだから!!想なんにも悪くないからッ!!!


この話の中で『想を酷く扱う』2人の男が出てきます。とりあえずそいつらをドブに埋めてしまいたい気持ちでいっぱいになりました。
まあ、一匹目の信田は店が傾いているようだし、二匹目のゲス医師は二度と想に手が出せないだろうし。
自分はどうなってもいいから梶山だけを守りたい、という健気な想と、もう誰もそばに置かないと固く閉ざした心を開いて想を受け入れた梶山が穏やかに暮らしていけたらいいなと思う反面、想を追い詰めたこの二匹は猛反省するべき!!!(しないだろうけどさ)
とにかく想がいい子でけなげだった!梶山先生もイラストで見るとそんなにいい男じゃない(失礼)んだけど、文章ににじみ出る大人の男性の部分がとても素敵だったと!!!


めっちゃ泣いたし、何度も読み返した。こんなに読み返したのは『もう一つのドア』以来だ。私のツボはこういうところにあるらしいですよ!!!
なんでこんなに読み返したのか、感情移入してしまったのかはよく分からないけど、ストーリーの流れが無理がなく、受も攻もとても自然に流れていったから違和感がわかなかったのがハマりこんだ要因じゃないかと思う。
最初と最後で性格(とくに攻に多く見られる)が極端に変化してしまうような話がよくあるけど、ああいうのは好きじゃないのだ。


とても自然でわかりやすい文章で読みやすかったのだけど、唯一『梶山先生がレストランで女にからまれて誤解された想が右腕骨折』までの流れがいまいちよくわかんなかったので誰か私に教えてください。
何度読んでも『第二の女』が出てきているような気がするんだけどなあ…うむう。気になる!!!



 想、レストランにて信田に捨てられる 
   ↓
 向かいの席にいた梶山、女に飲み物ひっかけられて女は去る
   ↓
 店のエントランスで想が梶山を見かねてハンカチを出す
   ↓
 そこに女登場『私ずっと待ってたのにあんた冷たい!そしてその人誰よキーッ!!』とキレる
   ↓
 想、巻き添え。右手ボッキリ。


これは、最初に飲み物をぶちまけてレストランを出ていった女がしつこくレストラン入り口で待ち伏せしてた、という見解でいいんだろうか…。