『神さまに言っとけ』 ★★★★★  感動度・最大』神さまに言っとけ (SHYノベルス)
 死にかけヤクザ(でも外見は大学生)×心に傷のある花屋(純粋な受)


ある事情から『純粋なる人』と恋愛関係を成立させなくてはならなくなった惣田洋一は、花屋に勤める眠鏡の冴えない十八歳男子・久慈真と恋愛すべく努力をしていた。期限は四週間。だが、女にすら本気になったことのない惣田に、男と恋愛できるはずがなかった。おまけに野暮ったい真はいつも俯きがちに話し、いつもおどおどしていて魅力がない…はずだったのだが!?榎田尤利が贈るスピリチュアル・ラブ。 (あらすじより)


榎田尤利さんのお話をしばらく読んでいなかったのでふと読みたくなった。この方の文章はさんざん笑わせたりしておいてドスンと落としたり、泣き笑いのような面白さがあって好きだ。図書館で借りるのってどうよ、という思いもあったのだけど、このお話はとてもいいとどこかでお勧めされていたので一度読んでみたかったのだ。
読み始めると面白くて、どんどんページが進む。人でなしのヤクザ者惣田(攻)がナイフで刺されて重傷を思うところから始まる。死にかけた惣田が生と死のはざまで出会った天使に『自分が生き返るためにある人物と恋愛をしろ』というとんでもない要求をされます。死にたくない一心でその契約をする惣田、しかしその相手は歯が欠けてでかい眼鏡をかけ、ぶかぶかのへんな服を着た鳥の巣のような頭のさえない青年、眞(受)だった。

肉体は植物状態なため、適当な大学生(清水)の体を借りて眞に近づく惣田。女相手にも本気になったことのない惣田がいい人ぶって眞に近づいていく過程がめちゃくちゃおかしい。それでも眞との間に不思議な絆がうまれて、徐々に気持も変化していく。
植物状態の自分の肉体を前に毒づく舎弟や遥か昔に音信不通になった母親を目の当たりにして、揺れ動いていく惣田。


リミットの4週間を前にして契約が少し変わります。恋愛をしなくていい代わりに『相手を自分に惚れさせて、その純粋な心を神にささげろ』と言い出す天子。落とせばOKと言いつつも自分も彼のそばが心地いいことに気づいてしまいます。
実は真の心には深くて癒しがたい傷があり、人と交わることを極端にさけていたのですね。
それを乗り越え、もっと一緒にいたいと眞が完全に心を開いた時、それが契約完了のときでもあり…。


うおおおおお、号泣しました。なんというか意表を突くラスト!
自分的には最後に二人で気持ちを確認しあうあたりでハッピーエンドになるんだろうと油断してたんですよ。
真が息を吸って吐き出す、その次のページをめくったとたんにドカンと突き落とされましたね。


このタイトルの『神さまに言っとけ』は、きっと最後の最後に清水から惣田に戻った攻の、理不尽な神に対する咆哮なんだろうと思った。
最後のページを読み終わって『この本を読んでよかったな』と感動屋の私は思いましたとさ。


この本ほしいな。でもこの方の昔の本は全然中古に乗ってこないから入手困難だったりするんだよね。
この方の昔の本をぜひどっかで文庫化して再販してほしいなあとか思ったりする。