『お願いクッキー』 ★★★★★  泣ける度・99%』

お願いクッキー (キャラ文庫)

お願いクッキー (キャラ文庫)

 姉の婚約者(有能な製菓企画者)×大手菓子メーカーの子息(妾の子)


「どんなに好きでも、彼は姉さんのものなんだ…」大手製菓会社の社長令息・一真の憧れは、姉の婚約者・椎名。ヒット商品を連発した椎名は社長である父に見込まれたのだ。椎名は一真を気に入ったのか、家に来るたび何かと話しかけてくれる。結婚式の前日まで一真をドライブに連れ出す椎名。婚約者の弟に、なぜそんなに優しいの…?ところが式の当日、突然姉が失踪して。 (あらすじより)


図書館から借りた本その3です。初めての作家様ですが『泣ける』と言われたので勇気を出して図書館で予約してみました。
こんなかわいらしいタイトルで何を泣くのか、まあ主人公の受け君は高校生だということで、ありがちな大人と子供のセンチメンタルラブストーリー(うわ恥ずかしい)だろうとか油断してました。


うああああああああ!ごめんなさい号泣しました。なんというか受けの子が不憫です。
一真(受)の唯一の頼りの母親は、再婚してすぐに家を出て行ってしまった。妾の子ということで家の中に居場所もなく味方もなく、ただ息をひそめている受。

偶然パーティーで出会った椎名は、さみしそうな一真に『お願いクッキー』を手渡します。
椎名が企画の試作品として作った手作りの品で、中には「頑張れば望みは叶う」ってかいてあるおみくじが入ってるのですね。俗にいうフォーチュン・クッキーなのですが、それを一真にあげるんですよ。一真はその時もらったおみくじを大事に心の支えにして辛い毎日を耐えているんですね。


その一年後、一真は自分の姉の婚約者になった椎名と再会します。椎名が好き、でも彼は姉さんの婚約者で…とか思ってたら姉さんはあっさり他の人と駆け落ちしてしまいます。会社の体面やら世間体などで、椎名は支社に飛ばされた揚句に辞めさせられてしまいます。
一真は何としても椎名に会いたくて家を飛び出し、探し回るのです…。


『お願いクッキー』で思いが通じ合い、何があってもくじけないと誓い合った二人です。その後の『しあわせキャンディ』では名前通りラブラブでベタベタで「君は僕の甘いキャンディだね〜★」とかのお話が来るんだと勝手に思っていました。


と こ ろ が!!


受君はもっとひどいことになっていました。日々エスカレートしていく兄からの虐待を訴えることができず、一人で抱え込みます。
人目を忍んでようやく椎名に会うことができても、彼を守ろうとするあまり苦しみを訴えることができません。
そして事件は起こります。


ううー、泣きました。このタイトル反則だぜ。でも最後まで読んでみてようやくタイトルの切なさに気づいたのですよ。
全体通して一真視点なのですが、この子はずっと息をひそめて生きてきたので全体的に幸せに不慣れです。なので言葉の端々に切なさが炸裂しているのですよ。
久々に会った椎名に試作のキャンディを口に入れてもらった時の『幸せがキャンディになったら、こんな味なんじゃないかと思った』という一真の思い。
最後のフレーズ『彼は俺の幸せそのものだ』ってのが直球で来ました。
この方の文章はとても好みです。機会があったらもっと追いかけてみようかな。


うーん、だんだん図書館に行きづらくなってきた。
図書館の本と言って、馬鹿に出来ないぜ。