★★★★☆  トンチキな癒し本夜の乱入者 (リンクスロマンス)作者: 椹野道流,琥狗ハヤテ出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス発売日: 2009/02メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (3件) を見るクロスケ(猫神様・全裸で登場!)× 和(心に傷を持つ引きこもり小説家)


トラウマから他人と接することに怯える小説家の斎藤和は、ある夏の日、暑さにへばっていた黒猫を介抱した。以来通ってくるその猫・クロスケとのささやかな交流に安らぎを覚える和の前に、突如、猫耳尻尾付きの全裸男が現れる。自らをクロスケだと主張する彼は猫神様で、恩返しにきたという。仰天したまま押し倒され、気持ちいい恩返しをされてしまった和。ずっと傍にいると約束してくれたクロスケの温もりに包まれ、固く閉ざしていた心が癒されていき…。(あらすじより)


私の神・椹野道流先生がリンクスで出すって言うから特に情報もないまま買ってみましたよ!
知っていたのは初期に発表された短いあらすじと、リンクスらしからぬ帯のみでございます。私は帯マニアなのでこういうくすぐる仕事をされると勝手に『負けたねッ』と言う気持ちになってしまうのでありますよ。


和は強度の対人恐怖症で、すでに鬼籍に入った両親から残された日本家屋にたった一人で住んでいる。息をひそめてぽつぽつと小説を書いて過ごす和の家に、ある日死にそうな黒猫が入ってきました。
その黒猫の描写が可愛くないとかふてぶてしいとか連発されているのだけど……。

こ、これは猫かね!?


その黒い猫をしぶしぶ介抱している内に少しづつ情が移る和。黒猫は居着くわけでもなく、フラッと来てはフラッと帰る通い猫状態になった。生き物のぬくもりをほとんど知らずに生きている和には血の通った『クロスケ(勝手に命名)』は心の中に確実に住みついていて、だんだんとかけがえのない猫になっていくんですよ。


そしてある夜。黒々とした耳としっぽをもつたくましい全裸の男性がいきなり侵入してまいります。
そこで例の決め台詞・『 まいど、猫です。』が出るわけですかッ!!
関西弁の猫は人間の姿を取って「和に惚れてしまった」と上がりこんでくる。
人間の形態をとれるのは夜のみ。昼は相変わらず黒猫のままで和のそばを守り、夜は人間の姿で和にイカを焼かせ、シシャモを炙らせ、コタツでチューハイを飲みます…。
そんなずうずうしい姿に文句を言いつつも癒されていく和。このあたりのやり取りは本当上手だぜ。


クロスケは、強いトラウマを抱えて『人間とふれあえない』和の心を和らげてくれます。じわじわとクロスケが和を外の世界に向けさせていく様子は、こちらまで優しい気持ちになってくる!!うわーい、いいのう。
そんなクロスケへの想いを自覚し、なんとか自分の気持ちの整理をつけようとする和。そしてクロスケの身に災厄が…。


事件が(起こるには起こるけど)あるわけではなく、ただ『心に傷を持つ小説家とふてぶてしい猫神様の日常』が綴られていく。猫好きの私としては、これは癒し小説だなあ、と思った。クロスケかっこいいぞお前!!
個人的には蔦屋敷の思わせぶりな兄さんと編集のキノコ頭(挿絵ではそう見えなかったが)の子がもっと絡んでくれたらなあと思った。続き読みたいなあ、この話はリンクスとかじゃなくて、シャレードあたりで続きを出してほしかったなあと思う!ちいさな事件をからめつつもっとクロスケと和のなんでもない日常を読んでみたい!(メス花みたいにね)
新書のシリーズものはいろいろと集めるの大変じゃないですかw


どの作品にも共通して思うんだけど、椹野道流先生が描く『日常』は涙が出そうなほどやさしいんだぜ。なんのことはない日常の営み(コタツ周りで繰り広げられるあれこれ)にも愛があふれているように感じるのは気のせいだろうか!
思った以上に良かったよ、さすが俺の神!!ホットケーキが食いたくなるよ!!