★★★☆☆  これは……………まずは『一枚の絵』ありき、の本ではないかと…ruin―傷 (リンクスロマンス)作者: 六青みつみ,金ひかる出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス発売日: 2008/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見るガルドラン(いい人なんだけど押し弱ッ)×カレス(親友に罪を許されたい自傷癖持ち)  激痛度: 出血級


幼い頃に親友のライオネルに救われ、身も心も尽くしていたカレスは、彼に同性の恋人ができたことで、初めて自分の想いに気づく。遅すぎた恋の自覚に苦しみながら、懸命に彼の片腕としてカレスは政務に励んでいた。だがある夜、胸の痛みに耐えかねて酒場に出向いたカレスは、暴漢に絡まれたところを山賊のような男・ガルドランに助けられる。カレスは酔った勢いで抱かれ、肉体を責められるその行為に奇妙な慰めを見出すが…。『光の螺旋』シリーズ第三弾。(あらすじより)


六青先生は私の中の神です。とにかく痛い作品が多いのですが、そこの中にある切なさが半端じゃなくていい。『先生もうやめてやってそれ以上やったら受が死ぬ!』と思いつつ覗いてしまう、この変な感じ。基本は受が不幸で不幸でたまらんのだけど、ちゃんと最後は救われる(のか?)ので、不幸受が好きな私とは相性がいい…はずだったのですが。カレス、精神的には救われてねえし。
このお話は『一枚の絵(同人誌)』というお話と対になっているようで、それはライオネルとその相手の青年のお話(大前提)だそうです。そこの中でカレスは二人を引き離す嫌な奴になっているようです。カレスはひどいことをしちゃったから、この話もある意味しょうがないかな、そしてカレスは救われていくのだろうと思われるのだけど。そっちを先に商業化しないと、この話だけだと『ライオネル=鈍感バカ色キチ』『カレス=盲目的』としか思えないような…。


■まずは大前提■
カレスは幼いころ、両親からうとまれて存在を否定されてしまったかわいそうな過去をもつ。そのとき手を差し伸べてくれたライオネルを兄として親友として異常なほど慕っていた。しかしある時、ライオネルは難民の少年を拾ってきてしまい、あろうことかその少年を愛してしまうようになった。ライオネルの一番は僕だったのに!実は僕だってライオネルのことを好きだったのに!!キィィッ!!と嫉妬に狂ったカレスは、もっともらしい理由をつけてその少年を手ひどい言葉で傷つけ、姿を消すよう仕向けてしまう。姿を消した少年はひどい環境に身を置き、体を壊して死にかけてしまう。それを知ったライオネルはその少年を救いだし、ひどいことをしたカレスを殴りつけて「今度やったら君と絶交!!」というようなことを言う。ライオネルに嫌われる事を何よりも恐れるカレスは、それ以来ずっとライオネルとその少年を見て見ぬふりをし、ライオネルの仕事上の右腕として心の痛みに耐えている―――。


ライオネルと青年は超ラブラブなため、カレスが入り込む隙間なんか1ミクロンもないのです。カレスはライオネルを諦めることもできず、かといって想いを伝えることもできない。それをわかっているから、仕事だけでも役に立つ相棒として存在を許される事を望むんです。
かつて青年に酷いことをしてしまったカレスはライオネルに疎まれる事だけを恐れ、許してもらいたくて自分で傷をつけるんですよ。青年が受けた痛みを自分にも与えないと自分は許されないと思いこむ。心が歪んでしまっているカレスは痛いことを望んでやります。


そんな病んじゃってるカレスは、スラムで偶然出会ったガルドラン氏に痛みを与えてもらい一時の安らぎを得たりします。
そういう趣味もないガルドラン氏はたまったもんじゃないだろうなと思うのだけど、見た目に反して優しい彼はできるだけ肉体にダメージを与えない、ポイントを押さえた痛みを与えてやる。それもこれもカレスの心の平穏を思うが為…うわぁ…。
そんなガルドランの心を見ることもしないカレスは、気まぐれのように優しくするライオネル氏の態度に上がったり下がったりです。ガルドラン氏とくっつけば心に平穏が訪れるよ!!って状況なのに、結局最後の最後までガルドラン氏の想いに気づかないまま、いろんなことに打ちのめされて真っ白に燃え尽きて廃人になってしまったりします…。


ムカつくのはライオネルの態度。廃人となったカレスの行く末についてガルドラン氏と対立した時に『カレスは自分の大事な家族!お前には渡さん!!』とこの期に及んで所有権を主張し、トンチンカンなことをガルドランに言い放つのです。いくら隠していたとはいえ、カレスの心に秘めた思いなんざ、微塵も理解しておりません。この天然色キチめ!!


さすがにこのラストじゃあんまりだと先生も思っていらっしゃるらしく、続編が遠くないうちに出るらしいです。ちゃんとこちらの世界にカレスさんは帰ってこられるんでしょうか。ガルドラン氏は介護生活の果てに愛を見つけられるのでしょうか!!
六青先生、文章うまいし!!なんか臭ってきそうなほど痛いんです。なんつうか「うわ、痛いなあ〜」じゃなくて「アイタタタタタ痛タ!!」ってくらい痛い。この光の螺旋シリーズは全体通して痛いんですけど…これは最強だなと思った。カレス、刃物は痛いからダメ!!
久々に横っ腹を押えながら本を読みました。