★★★★☆  受のトラウマ物月を抱いた (竹書房ラヴァーズ文庫)作者: 夜光花,麻生海出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2004/05/22メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る

 了(なぜか受に逃げられてしまう)×直樹(攻から逃げ続けるトラウマ持ち)   受のトラウマ度・ハイパー級


恋人だった了のもとから逃げ出して四年―。直樹は住む所を転々とし、まるで逃亡者のような生活を送っていた。自分が幼い頃に犯してしまった罪を了にだけは知られたくない。ばれて軽蔑され、嫌われるのが怖い。そんな直樹の思いとは裏腹に残酷な運命は二人を再び引き合わせてしまう。四年前と少しも変わっていない了の甘く激しい求愛と、決して知られてはいけない罪の意識に、直樹は次第に追いつめられてゆく…。妖しく危ういセンシティブラブロマンス。 (あらすじより)


しばらく堪野道流ワールドに浸っていたおかげで幸せ街道まっしぐらだったのですが、気を取り直して文庫を減らしにかかったとたんにすごいの来ました。
受のトラウマものです。しかも、トラウマ度がスーパーリアルでハイパーです。気持ち悪いくらい迫ってきます。


直樹は了には絶対知られたくない秘密を抱えており、無意識に逆らうことができなくなっている。そんな直樹のことなどつゆしらず、了は直樹を強引に口説き落としてつきあいはじめます。逆らえない直樹はずるずると付き合いだすが、次第に了に惹かれていく。了の元にいることに対する罪悪感に耐えられなくなった直樹は了の元を逃げ出し、潜伏するように各地を転々として暮らしていた。
何年かすぎ、ようやく東京に戻ってきて花屋でバイトを始めた直樹は、偶然エレベーターの中で了に再会してしまう。
言い訳をすることもできず、ただ苛立つ了のまえで「自分のおかした罪」がばれることをひたすら恐れている直樹は、逆らうこともできずにまた了にからめとられていく…。
その「直樹の犯した罪」はかなり後になるまで判明しません。おびえ方が半端じゃない直樹に「お前さん何やったんだよもういいから吐いちまいなよ楽になるよ」と思わずかつ丼を差し出したくなります。
そして中盤、直樹の秘密は了の妹、百合が関係していることがわかってきます。ますます「お前何やったんだよ、ま、まさか」とか思いだした頃、だんだんと判明していく「直樹の犯した罪」に背筋が寒くなりました。
子どものころのあやまち、誤解、恐怖が凝り固まって直樹というかわいそうな人間を作り出していたんだと思ったら涙がでました。


ラスト近く、壊れた直樹が素手で土を掘り返すシーンで中断して涙を止めるのに苦労した。直樹が「お守り」のように常に持っていた物が、死んで楽になりたい気持ちと罪から逃げることへの恐れと、とある人物への懺悔をよくあらわしていたと思う。

夜光花先生の本は、サスペンス仕立てですごいです。受が徹底して精神的に追い詰められる描写がすさまじいです。リアルさでこちらが吐けそうです。