★★★★★  テンプレだろうがなんだろうが、誰が何と言おうとこれは良かったと思う!!スイート・セプテンバー (SHYノベルス)作者: 藤代葎,水名瀬雅良出版社/メーカー: 大洋図書発売日: 2009/01/29メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る橋場(後遺症によりカメラを捨てた無愛想)× 夏南(すべてを捨てて再生しようとする健気な子)


「俺、ここにいてもいいですか?」誰も自分を知らないところでやり直したい、そう願った御崎夏南は、幼い頃に一度だけ訪れたことのある海辺の町に降りた。そこで気難しいうえに偏屈なカメラマン、橋場洸陽のコテージに住み込みで、家事雑用の仕事をすることになる。過去から逃げてきた夏南。怪我によりカメラマンとしてのキャリアと同時に希望も失った橋場。傷ついたふたりの出逢いは、やがて新たな希望をもたらすのだが…!?海辺の町で生まれた愛と再生のラブ・ストーリー。(あらすじより)


過去の自分を見つめ直し、今まで逃げ込んでいた場所から何もない場所で再生しようとする夏南と、右手の握力を失ってカメラを捨てた偏屈なカメラマンが静かな海辺の町で出会って、お互いがお互いの存在をゆっくり肯定していくお話。


カメラを持てなくなって今までの自分を捨ててしまった橋場ですが、自分の色のない生活に夏南が与えてくれる安らぎや潤いを心地よく感じ、いつの間にか夏南を受け入れていくんですよ。そしていろんなことにちょっとづつ前向きになっていく。
いつしか、自分の悪友と夏南が慣れ合うのを見てなんだかわかんない不快感を募らせる橋場。
徐々に夏南に対して見せはじめる独占欲!それを受けて性癖をカミングアウトしちゃう夏南!そのあとの橋場の優しさと、さらなる独占欲!(でも無自覚!)
なんつうかこう、ハッシュドビーフのルー、グッジョブ!!ウハーッて感じでした。あれ、今回感想変だな。
だんだんと近づいていく二人の心。二人で過ごす穏やかな日々。そして、捨てたはずのカメラを少しづついじり始める橋場…。
夏南が側にいることで、橋場がどんどんと柔らかくなっていく過程がすごく丁寧に書かれていた。


後半、夏南は過去の亡霊ともいえる男と対峙します。攻を心の支えにして一人で立ち向かう夏南。それは自分の逃げ続けてきた過去との決別で、その時こそ本当に夏南が再生した瞬間だったな、と。その男はいままで夏南をそばに置くことで自分を確立していたんだろうなと思うと、ゆがんだ愛情がかわいそうにも思えてきます、が…テメエのやったことを考えると「橋場にろっ骨数本折られてしまえばいいのにッ」とか思ったりします…。
橋場が激昂する場面は本当に、久しぶりに、萌えた!!!橋場、無愛想で冷めた人かと思っていたら結構熱い人だったんだな!!


うわあ、これ、良かったよ〜〜。
激甘と言うわけではなく、言うならば「甘切ない」ッて感じでしょうかね!!夏南と橋場、両方からの視点で書かれているのでお互いがいかに大切に思いあっているのかがすごく良くわかった。
うーん、確かに設定はありふれていたりとか展開は読めるとかあると思うんだけど、すごいさらっとしていてすんなり入ってきた。なんつうか、文章がキラキラしてましたよ。この先生、まだ新人さんなんですかね、2冊しか出してないんだねえ!


おいらの理想の受ってのは「かわいくてけなげで美人でしかも凛としていて男前なところもあって結構精神的にも強くて攻には無償の愛をそそいじゃう!」てのがあるんですがね。
これを全部満たしていたらそれはちょいやりすぎ、完璧すぎてイヤンだけども、夏南は結構理想に近い子だったよ!
無愛想攻も健気受も大好きなのですよ。自分的・理想的な受ランク&理想的なカポランクに乗せましょう!


PS 水名瀬絵師のイラストはいつも透明感があって好きだ。だから今回の透明なお話にとても合っていて良かった!
  213pの「暴行を受けてボロボロのはずの夏南」の絵が、傷一つないきれいなお体に描かれていたので「!?」と思った。
  それ以外は素晴らしい!(私が細かすぎるのだろうか)