★★★★☆  夜光節キタ!!サスペンスやるならここまで徹底的にやるべきだと!おきざりの天使 (SHYノベルス 191)作者: 夜光花,門地かおり出版社/メーカー: 大洋図書発売日: 2007/09/27メディア: 新書購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (6件) を見る高坂(冷静な生徒会長)× 圭一(トラウマを秘める副会長)


「俺、やっとわかった。お前が好きなんだ」17歳の高校生・嶋中圭一は、毎朝、従兄弟の徹平とともに登校する。最近はクラスメイトで生徒会長の高坂則和と電車で一緒になることも多かった。その朝も、圭一はいつものように高坂と一緒になった。ただ、一週間前のある出来事以来、圭一は高坂のことを強く意識するようになっていた。密着する身体をこのままでいたいと想ったり、離れたいと願ったり…だが、平穏なはずの一日は不穏な何かに包まれ--(あらすじより)


↑あらすじじゃ全然この本が伝わってない。これだけを読んで買っちゃったチキンさんは愕然とするんじゃないだろうか…。
眠れない深夜に読む本じゃなかった。絶叫、狂気、そして流血。マジでサスペンスホラーBLでした。でもね、これが、これが夜光先生なんだ!!


最初はよくある学園ものです。
少年の頃、川の字で眠る布団の中で、自分を挟んで両親が服毒心中。そのことが原因で数々のトラウマをかかえる圭一。しかし普段はそんな姿を見せることもせず、引き取られた叔父叔母の家で良い青年として生活しています。同い年のいとこ・徹平だけには心の傷を見せていたりしてますが、基本は「目立たず、誰にも迷惑をかけない」という自立した考えで日々を過ごしているんですよ。
高坂は特技の『人間観察』にて圭一の闇に気づき、徐々に距離を詰めてくる。生徒会長と副会長になった二人は、お互いがお互いを意識、ついに高坂が告白して二人は晴れて恋人に!


そして事件は静かに静かに起こっていくわけなんすよ。
ある日おこった地震がきっかけで、学校という空間が閉鎖されてしまう。訳が分からず校門から出ようとすると、その人は死んでしまう。その『生と死の境界線』は校門から玄関、そしてある一部の教室と狭まって行くんですがね。そこを超えると、超えた人間は容赦なく死んでいく。どの教室がデッドゾーンになるかわからないのですが、その時間にそこにいた人間は全員死んでしまうため、当然パニックに陥りますよ!!
とくに合唱部の部屋からだんだん狂気に取り憑かれていく生徒たちが集団自殺していく場面なんか…そして、希望を見出そうと前向きになった生徒たちが血まみれで死んでいった場面なんか…マジで鳥肌でした。夜光先生、すごいよ。BLにしておくのもったいないなと思うよ。


ほんとね、怖かったんだよ!!次に何が起こるか判んなくて、びくびくしながらよみましたよ。一気にガガッと読み進め、途中でボードゲーム研究会の会長が分析してくれるところで一息ついて、自分なりに分析してみたんですがね。
先生の展開運びが見事すぎて、全く先が読めない。個人的予想としては『圭一は実は死神なんだゼ!説』と『これは圭一の悪夢だよ!説』と『漂流教室!!説』どれもありそうで全然分かんなかった。この世界の真ん中に圭一がいるんだぜってことは間違いなくわかるんですがね。


そして徹平の存在です。今まで圭一を陰日向で支えていた徹平が『高坂に圭一を取られた』と自覚してからの変貌ぶりが…。怖ぇよ!!
最後のオチは「あ、なるほど〜、そこでその設定が生きてくるんだ」ッて感じで感心しました。ただ、甘くはない、嫌な余韻を残す終わりだったのでモヤッとした…。まだあるのかとページをめくったら「あとがき」だった。これが圭一の幸せだったのか、判断がつかないですね。ハッピーエンドではなく、これからハッピーになるために頑張っていく第一歩を踏み出した?って感じなんだろうか…。


夜光先生好きで結構読破していますが、ここまでぼこぼことリアルに人死にが出るサスペンスホラーは初めてでした。でもこれこそが夜光先生だぜ!
イラストの門地先生がいい意味で救いです。これでイラストがもっとこうやばめな先生だったら、夜には読めない本ですよ!!



……あー、なんかこう、もんのすごい甘い本、読みたい。なんかないっすか。ゲロ甘なやつ。