★★★★☆    声出せよ。……前は我慢なんかしなかっただろ?(ッて言われても!!!)満天星 (二見シャレード文庫)作者: 神江真凪,立石涼出版社/メーカー: 二見書房発売日: 2008/09/22メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る君塚(脅迫する小説家)×喬(孤独な司書さん)   喬の孤独度 : 高


図書室司書として働く天涯孤独な江上喬には、ずっと心の支えにしてきた小説があった。その著者である君塚映司を、そうとは知らずに年上の友人として慕っていた喬は、ある夜、酔ったはずみで彼に抱かれてしまう。「初めて会ったときから、どんなことをしてもほしいと思った」――戸惑う喬に、これまでにない強引さで脅すように付き合うことを強要してくる君塚。やがて彼の真摯な優しさに身も心も惹かれるようになる喬だが、君塚の執着の秘密を知り――。 (あらすじより)


両親を亡くし、さらに自分を守ってくれた祖母を失ってしまった喬。天涯孤独となってしまった彼は一冊の本を心の支えにして、慎ましく司書として暮らしていた。そんな毎日を送っていた喬の元に、君塚という男性が通うようになる。喬が大切にしているその本の作者という事で意気投合してしまった喬は彼に心を許して食事の誘いに乗ってしまった…。そして朝起きたら!!!!という超展開。


いきなり豹変した君塚、その事実を図書館にばらしていられなくしてやると脅しをかけてきます。喬は居場所を失う事を恐れて君塚に逆らえず、付き合いを始めるようになります。脅迫じみた始まりで喬を追い詰め強引に関係をはじめる君塚でしたが、一緒にいる喬に対して御無体はしません。強引だけど優しく、喬自身も気づいていなかった『心の中にある傷』を癒していきます。そしていつのまにか喬も君塚を『失いたくない存在』と認識してしまいます。

そのまま二人は穏やかに暮らしていくのです……んが。やっぱり事件は起こるのです。


君塚は嘘はついていないんですよ、ただ、喬に話していないことがあっただけで…。

この事実を喬が知ってしまった時、二人に別離が訪れるんです。君塚は最低最悪ですが、心の底で喬に対する罪悪感に苦しんでます。そんな彼もようやく過去を振り切って目の前の幸せを見ようとした矢先、喬に去られてしまうんですよ。ザマアミロと思いたい所なのですが、私は彼を憎めないなあと思った。


うおおう、泣いた。地味に泣けたぞこれ。私、涙腺弱すぎ。喬、不幸すぎ!!!
やべえネタばらしになっちゃうから書けないじゃないか。途中でちょっとストーリーが読めてくるんですが、それでも泣けてしまった。
喬は『自分は幸せになってはいけない』ではなくて『自分が幸せになるなんてありえない』と常に考えています。それは悲しい生い立ちから来ているのですが、無意識のうちに幸せを放棄しているという悲しい生き方を君塚は変えてくれます。最後はちゃんと喬自身の足で君塚を求め、幸せになろうと努力するんですよ!!

そして、素直に自分の心に向き合った喬は『自分も君塚のことを言えない』と気づきます。少しづつズルい心をもって寄り添っていたことに最後に喬も気づくわけですが、君塚はそんな喬の心を最初からわかっていました。それでも喬を受け入れ、きちんと心を通わせたので良かったなあと…。
派手さはないけど、じわーっとくるお話!この作家様好きだ!!


過去読んだこの作家様の御本

青空の下で抱きしめたい (二見シャレード文庫)

青空の下で抱きしめたい (二見シャレード文庫)

征也(血の気の多いホスト)×裕希(不幸のどん底にいる会社員)

リストラ、誤解により暴行、揚句に住処の火災…不幸のどん底にたたき落とされた祐希は、あろうことか自分をぶん殴って病院送りにした征也と同居することになります。征也の娘と征也の送るあんまりな生活ぶりをみて放置できなくなった祐希は家事を担当するようになったのだけど…というお話。
娘に対して真摯な愛情を注ぐ征也と、そんな彼をみまもる裕希が…!
読後『このまま彼らが穏やかに暮らしていけたらいいのう』と思わずにはいられなかった秀作。よかった!!