『アパルトマンの王子』 ★★★★☆  金髪度・高』
 金髪御曹司(でも日本人)×不動産経営者(5人兄弟の長男)


「家賃の予算3万円で庶民の暮らしを学びたい」不動産屋の優一の元に現れた、セレブな御曹司・世羅。金髪にゴージャスなタキシードで異彩を放つ世羅を、優一はなりゆきで世話するハメに!!紳士で優しい世羅との毎日は心地いいけれど、修業が終わればこの街から出ていってしまう…。そんなある夜、世羅が「君が好きだ」と告白してきた!!想いを止められない優一は、一晩限りと身を任せて―。 (あらすじより)


ずっと前から積んであった榎田さんの本です。とっとと読めばいいのに(きっと面白いはず…読んだらもったいない)みたいなへんな保険みたいな気持があって全然手に取れなかったんだよね。とっておき、みたいな。


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藤井沢は腕のいい板金屋が歯医者さんといちゃいちゃしていたり、駅前にはイケメンのギャルソンとオーナーがいてオーナーはドSだったり車の販売営業所があったりととってもゲイ率が高い素敵な商店街です。その商店街の一角にある不動産屋にある日とんでもない王子様(御曹司)がやってきます。
御曹司は修行のため、30万で3か月過ごさないといけません。敷金礼金賃貸料、それも30万に含まれているためとにかく安い物件を探しているのです…が。
金銭感覚がまひしているため長男気質の優一(受)が何かと世話を焼いてやることになります。

優一は5人兄弟の長男、父親は病気で亡くし、母親は入院中です。下の兄弟たちを父のように母のように兄のように導かないといけない重圧に耐え、常にいいお兄ちゃんを演じています。そのため、駆け落ちしようとするくらい好きだった人に、ついていけないという理由で別れているという悲しい過去も持っています。


軽めの表紙に軽めの文体、軽めの設定と全てがライトに仕上がっている「ちょっと読もうかな」にふさわしいBLでした。


…んが。
信じられないことにおいらはこれで泣けました。なんというか優一が、ゆういちいぃぃぃ(涙)
家族のために自分を殺し、ただひたすら兄弟たちを思って「いい兄」を演じ続けてきた優一がクリスマスの日に見せた涙にやられました。
榎田さんのお話はこうやって突然泣かせるから油断してるといい球がくるんですわ。


シリーズ2作目の『ギャルソン〜』の時は2重人格歯科がちょろっとゲスト出演していましたが、今回は駅前のカフェでちらっとオーナーたちが出てきたり、ライバル店で王子がバイトしたりしてました。こういうのがシリーズものの醍醐味、できたら車をぶつけて板金屋を出していただきたかった。
藤井沢シリーズは4冊目ですが、自分的には歯科医の次に好きだぜ!!
次(5作目)は美容師と理容師のお話がでるそうで。藤井沢は順調にゲイの街になりつつあり、とってもほほえましい!!