『遥山の恋 ★★★★★  純愛度・高』遙山の恋 (リンクスロマンス)
 恩知らずな貴族様(俺様攻)×痣のある美青年(けなげ受) 


身体に醜い痣をもつ少年・紫乃は、老犬・シロと狩りの最中に傷ついた戦装束の青年を救う。人と交流を持たず、山で一人、暮らしていた紫乃にとって、誰かが近くにいることが何よりも嬉しかった。夢でうなされ苦しむ青年を、必死に看病する紫乃。しかし、目覚めた青年は、紫乃の顔の痣を見て『化け物』と罵る。青年の残酷な言葉に深く傷ついた紫乃は、それでも献身的につくすのだったが―。 (あらすじより)


いやあ、これがデビュー作ですって。
なんというアレな作家さんでしょうか。
おいら、一生ついていこうとか思っちゃうあたりアレですが。とにかく、受がけなげです。
受には七代祟られている証の醜い痣が体の半分にあるんですが、それをみて攻(人でなし)が化け物呼ばわりするんですな。それからその姿を見せないように姿を隠しつつ献身的に看病する姿でまず泣く。前半はただ人恋しさの余り助けた青年に邪険にされても罵られても踏まれても蹴られても(誇大表現あり)ひたすら尽くすですよ。


姿の醜さで下界で暮らせず、呪いのせいで一族(父親)とも暮らせず一人きりで犬と一緒に山の中でくらさないといけない受は、孤独をいやしたいがために攻を引き留めようとするがそれができなくてまた泣く。いつか去ってしまう人だと怯えつつもひかれていく受、さらに涙。
そんなけなげな様子に攻も態度を改めて、いつしか優しくなっていく。しかしお互いの思いを伝えあったとたんに別離が来る。涙。
そこからの受の心理描写はすさまじいものがあります。血を吐くような文章、ゴフッ。
そこを乗り越え思いが通じ合って呪いも解決、しかしそこからはラブラブ全開…とならないのがこの先生。グハッ。


ああもう、とにかく泣くポイントをいちいちいちいちついてくるんですよこれ。来るぞ来るぞと警戒していてもどうしてもだめ。そうだよ私は泣きたかったんだよ。泣いてすっきりしたかったのね。
ラストは唐突で『そうくるのかッ』と思わず声がでた。私的にはこりゃないよな、と思ったのだけどハッピーエンドにするにはどうしたってそうしなきゃだめだろうな、と。おかげで最後の涙は「よ、よかったね受〜」でした。

この人のすごさは背景描写にあると思う。どんどん引き込まれていくのはそういった文章のうまさなのかな。
ファンタジーがびっくりするほど染みる。苦手意識で読まないのってもったいないな、と思った。