『午前5時のシンデレラ  ★★★★★ 危険度・低』
 釘師(年下攻・小倉弁!!)×わけありパチンコ店員(ある意味美人受・負け犬) 午前五時のシンデレラ (ディアプラス文庫)


ヤクザ崩れの釘師・飛良(攻)と、ドロップアウト教師の優也(受)が出会ったのは、レトロなパチンコ屋だった。危険な匂いのする釘師になぜか目をかけられて、優也は徐々に新しい職場になじんでいく。だが元生徒の父親が店に乗り込んできたことから、優也は飛良と偽装同棲をする羽目に‥?
待っていたのは、今までの価値観を180度変化させるような日々−。
北九州・小倉の町を舞台に繰り広げられる、男たちの人生ゲーム!!(あらすじより)


優也は30過ぎまで人間に裏切られたことのない温室育ちで、井の中の蛙。その優也が思いがけない事件からどん底に突き落とされて職も住むところも失い、レトロなパチンコ屋に住み込みで転がり込む。
飛良に拾ってもらうまでがとても切ない。普通はここで優也がめちゃくちゃの美人なり可憐なりするのだけど、普通の優男だったり頬がこけていたりみすぼらしかったりする。それでもちゃんと飛良が優也の人間性を見極めて接してくれるところのくだりなんか本当に引き込まれた。
(以下、ネタバレを反転してあります)
お互いに意識し合い、パートナーとして認めつつもうまく向き合えない二人は、ある些細なことから決定的にすれ違ってしまう。そして誤解して思いつめた飛良が優也を強姦してしまうのだけど、優也と飛良のお互いに抱える絶望感が切ない。
その次の日、意地を通して午前5時の仕事に向かおうとする優也と飛良の温度とか、誰もいないレトロでのやり取り。
その夜、飛良を狙う元ヤクザたちに拉致されてしまう優也をけじめをつけてまで助けようとする飛良。
その続編の、お互いが思いあうも微妙に近づけない腫れ物に触るような日々を変えていくお話もジリジリとした感じでよかった。飛良の過去を垣間見るにしたがって疎外感を見せ付けられてしまう優也。兄貴分の出現により決断を迫られるも全然ぐら付かない二人がいい。いざとなったら飛良より肝が据わり、とんでもない行動に出る優也がとてもステキだった(やっぱり受視点w)

この本、タイトルがまずいいい。
午前五時に誰もいないパチンコ屋に清掃に入り、灰かぶり(シンデレラ)になりながら必死に掃除する優也。
それを誰よりも理解し、不器用ながらもさりげなく気遣う飛良。ステキだ。

攻の飛良(27・元ヤクザ)が話す言葉は全部小倉弁。とにかく男くさい。
『好き』を『好いちょうとぞ』に言い換えるだけで、どうしてこんなに言葉が生きてくるんだろう。
いつも『くそうあんなに受を苛めやがって許せん』とか『なんで気持ちを分かってやらないんだ攻の人でなし』とか想いながら受視点でBLを読む私が、久々に両方の視点から満遍なく理解できるようなお話だった。
どっちも不器用ながらお互いの人格を尊重しあって、そして誤解もありながらいっしょに生きていくまでを描いたまさに人生ゲームのようなお話だなあ、私のようなBL初心者の方もコレは是非読んで欲しい。
文章がストレートで、俗に言う『BL文法』を使っていないのが一番の原因かも。
なんかこう、スッとしみてくる感じ。なんでもないのに染みて来るって、実はとてもすごいことかも。

この作家さんは新人さんらしく、まだ何冊も本を出していない様子。今なら私でも簡単に全制覇できそうだ。
レッツ作家買いです。

あと、やる事はやっておられますがエロくありません。BL=エロを求める方は物足りないのかも。