★★★★★   神様。お願いです。どうか俺に忘れさせないでください。明日も愛してる (Holly NOVELS)作者: 安芸まくら,深井結己出版社/メーカー: スコラマガジン(蒼竜社)発売日: 2008/08/04メディア: 新書購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (10件) を見るツダ(櫂のハウスキーパー)× 櫂(記憶障害の男) 


 朝、櫂は、知らない部屋のベッドで目が覚めた。眠りにつくまで櫂は18歳だったが、枕元に置かれたファイルには「現在のおまえの年齢は35歳」と書かれていた。戸惑う櫂の前に現れたのは、ツダと名乗る男で…。(あらすじより)


とある事故で記憶障害を負ってしまった櫂。18歳の記憶のまま年をとり続け、朝にはすべてを忘れて最初から記憶を覚えなおす生活を続けている。
朝起きてまず自分の境遇に絶望する櫂と、それをさせなければならないツダ。


13分しか記憶が持たない櫂はアラームを常に気にして、大事なことや忘れたくないことは必ずメモに書き、もっと大事なことは自分の体にかきつける。その都度、ツダは優しく嘘を吐き続けていくのだろうね。ツダの気持ちを思うと苦しくなるほどだ。
これ以上ないほどの重苦しい設定だけど、櫂は18歳の精神年齢なので軽い語り口調で、むしろ明るくツダと二人の日々を語っていく。それがますます切ない!!
櫂の病状は回復の見込みはなく、むしろ過去の記憶は減退し、13分の猶予も徐々に失われていくのだろう。
このあとの二人はどうなってしまうのだろうかとも思うのだけど、きっとツダは櫂を最後まで優しくだましていくのだろうと思う。そう思いたい。


久々にレビューしたいけど出来ない作品を読んでしまったよ。
いつも泣くときは、なんかこう心臓のあたりからせりあがってくるものがあって泣くのだけど、これはへその後ろあたりからぐわっと来た。
ラスト近くで櫂が神様に心の底から祈るのですが、その文字はにじんじゃって読めなかったよ!!
万人にお勧めするものじゃないとは思うのだけど、私は良かった。いかん、引きずりそうだ。なんか支離滅裂!!


残念なのは、何故櫂がこうなってしまったのかという描写がほとんどなかったことと、櫂とツダはどうやって事故前を過ごしていたのかという事があまり語られなかったこと。櫂の眼から見たツダの姿とツダが語る言葉がすべてになってしまって、ツダの心が見えなかったこと。でも、掘り下げて読みたいような、怖いような…。
木原先生とはまた違った感じの『鉛本』だと思った。