『至福の庭」 ★★★★★  シナリオの高さ・ハイレベル』至福の庭~ラヴ・アゲイン~ (リンクスロマンス)
 改心中の元同級生(攻)×トラウマ持ちのはかない青年(受)


カウンセラーである兄の仕事を手伝いながら暮らす鈴木佳人は、過去の事件が元で心に深い傷を抱えていた。ある夏の日の午後、佳人は唯一の安らぎの場である庭で、藤堂大司という男と出会う。男性的な力強さをもつ藤堂に怯えを抱きつつも、魅力的で真摯な態度に惹かれていく佳人。彼と過ごした僅かな間にも、佳人は不思議と離れがたさを感じていた。別れ際、自分に向けられた藤堂の、何かを訴えるような瞳に佳人の心が揺れ動き…。(あらすじより)


受はあいまいな記憶を自分の中に何重にも封をして閉じ込めてあるんですな。それが攻と再会したことによりどんどん解放されて過去の悲惨な出来事を思い出してしまうんですよ。攻は過去に受に最大級のダメージを与えているのですが、それを反省して自分を受け入れてもらえるようひたすら受に寄り添います。出会いからして『こいつら過去に何かあった』臭がしているのですが、そのネタばらしが早い段階でされてしまうあたりさすがだなとおもった。引っ張る作家さんは「こいつらは実は過去に付き合ってて〜」みたいな感じでそれがオチみたいにしてしまうんだろうな。


すったもんだのあげく結局心を開いた受、しかしそれは『開いたようにみえた』だけであって結局完全には開かれてないんですよ。そのあたりの攻の葛藤がまた大変なんだけど、自業自得みたいなところもあってかわりと普通に読み進めた。
むしろラスト、伏線がどんどん消化されて完全に受が覚醒していくところなんて涙で前が見えなかったぜ。
うあああああ、これはすげえよ〜私のツボそれ以上押すと穴があいちゃうぜ!!!というくらい押された一冊でした、
この方の作品は今までファンタジーしか読んでなかったのだけど、世界観が違ったって全然気にならない、むしろ現代もののほうが私は好きだぜ。


私の中であまり攻が魅力的に映らなかったのはこういう自分勝手な男ってあまり好きじゃないからだろうかw